アキラとあきら

久々に面白い企業ものを見たなあと思いました。
wowwowはやっぱりこういうタイプのドラマ巧いなあと思います。
過不足ない演出で、というか演出的には押さえ気味にして
かっちりと物語を全面に押し出してくる。
TBSの作る企業ものは演出が過剰に思えて少し苦手になりつつあるところだったので
なんか久々にシンプルに面白い企業ものを見た気分。
企業もの、特に池井戸さんの作品のおもしろさって
私が今まで見たり読んだりした範囲の狭い認識ではありますが
ある意味昔ながらの勧善懲悪的なおもしろさなような気がします。
私利私欲にまみれ、時には不正を働くような悪い輩がいて、
主人公がそれに知恵と勇気で立ち向かって最終的に勝つ・・・というような。
今回も向井くん演じる方のあきらの叔父さんが、もうどうしようもないやつ。
この物語はバブル以前から始まっていて
(そこに主人公たちの過去の物語が挿入される)
私たちはこれから時代がどう変化していくか知って物語を見ているので、
叔父さんがリゾート開発事業に入れ込んで
「これは将来間違いなく成長する事業だ」
なんて言っているのを聞くと、ダメだこの叔父さん・・・と思う。
偉そうな御託ばっかり並べて、人の忠告は聞かない、
自分勝手な楽観的な理論で押し切る。
しかもその思考の根底にあるのは、くだらない兄への対抗意識。
自分が不当に評価されないと思いこんで見栄を張る。
そして人を陥れ、足を引っ張る。
くだらない・・・と思う。
でも、きっと社会ってこういうことで回っているんだろうとも思う。
そういう閉塞感を主人公は見事な策で乗り越えていく。
今回は身内の感情の確執が根底にあるので、
花咲舞や半沢直樹のような、相手を小気味よく喝破するようなシーンはあまりありませんでした。
じんわりと叔父を諭すような場面があっただけ。
でも、叔父が作ってしまった危機を、
もう一人のあきらと共に、知力で乗り切って行くのを見るのはとても爽快だった。
もうダメだ、倒産しかないのか・・・という時に、
誰も考えつかない方法を思いついて起死回生をはかる。
アイデアはいいのに次々に新しい困難が露わになってきて、
なかなか思うようにはかどらないんだけど、
それでも負けずに立ち向かっていると次第に道は開けてゆく・・・
そのワクワク感が本当に面白かった。
向井君はこういう役本当にはまりますね。
育ちの良さと頭の良さ、そして誰もが認めるカリスマ性を
ちゃんと説得力を持って体現していました。
斉藤君は、逆にこういういわゆるバリバリの社会人、
それも巨大組織の中で生きる社会人というのは新しいイメージでした。
何せ私が最初に斉藤工くんを意識したのは「チェイス」だったので
そのイメージが根っこに残っているんだと思います。
でも普通にはまっていたので、企業ものもいけるなあ・・・と新しい発見をした気分。
向井君と体型も似ているのでアキラとあきらという二人の人物を描くのに
それもよい方向に作用していたなあと思います。
この主役二人の描き方もよかったんですよね。
こういう対照的な二人の主役・・・となると
ライバルとして対立させるのがオーソドックスな描き方だと思うのですが
決して対立させず、違うベクトルから問題解決に向かわせるという描き方が
すごく好きでした。
生まれも育ちも全く違う二人の人生が、微妙に交錯しているところも
面白かったなあと思います。
二人共通の昔からの知り合いとして北村亜衣とその父親がいて
もしかしてここを軸に二人のアキラが対立したりする?
と思ったのですが、そんなこともなく、
でもこの二人が自然な形でずっと二人のアキラに関わり続けたのも
面白かったです。
結局、ドラマ見てスカッとしたいんですよね。
現実がままならないから。
でも、だからといってそこに過剰にスカッと感を煽るような演出はいらないんだなあ・・・
と感じたドラマでした。

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脳にスマホが埋められた!

この感想は特にネタバレを含んでいます。

タイトルのしょーもなさとは裏腹に楽しいドラマでした。
伊藤淳史主演作には当たりが多いという自分の中の法則が
また一つ証明された・・・という感じ。
こういう普通の人設定の主人公に伊藤さんが合うのか、
はたまた伊藤さんが演じることで普通の人設定に魅力が芽生えるのか・・・。
とにかく面白かったです。
スマホ人間なんていかにもな大嘘を使って物語を転がしているんだけど
基本的に描かれる物語は等身大の話。
リストラだとか出会い系サイトで知り合った男性との恋の話とか、
社内不倫の話とか・・・。
スマホ人間って言っても、他人のスマホをのぞき見ることができるくらいで
他にもいろいろできるにはできるんだけど、
それって別にスマホ人間じゃなくても普通のスマホでもできるよね?
くらいの能力なのが絶妙におかしい。
主人公がだんだんスマホ人間であることになれてきて
少しずつ行動に自信が出始めてくると
人間味はあるし、いい人だし・・・と本当に魅力的な人に見えてきて、
いっそヒロインの石野さんとくっついちゃえばいいのに・・・
と思っていたのですが、
主人公は子供がいて、離婚歴があるという設定なんですよね。
実際に主人公の子供が登場したのは最初だけで
途中からあまり登場しなくなったので、
これだったら子持ち設定なくしておいて恋愛要素入れてもよかったんちゃうん?
と思ったのですが、主人公の子持ち設定にもちゃんと意味があったんですよね。
石野さんが主人公の折茂に近づいたのは
折茂のスマホ人間としての能力を利用して社長に復讐をするため。
石野さんが社長に恨みを持つ理由は
過去に自分が立ち上げたブランドをつぶされた恨みと説明していましたが
実は社長は自分の父親であり、浮気をして母と自分を捨てた父に復讐するつもりだったと
最終回で明かされます。
あ、なるほど・・・だから同僚の不倫をあれほど責めたのか・・・。
このドラマ、すごくおおざっぱな感じなんだけど、
ものすごくちゃんと伏線はってるんですよね。
だから折茂くんの父親設定も、隠された社長と石野さんの親子設定を際だたせるために、
そして二人の関係改善に説得力を持たせるためにどうしても必要だったんですよね。
そして何よりぶったまげたのは、社長がスマホ人間を集めて正義の味方集団を作ろうとしていたってこと。
ばかばかしいのは「スマホ人間」っていう設定だけで
実はわかりやすい事件解決要素のあるヒューマンドラマなんだな・・・
と思っていた認識が最終回で180度覆されて、
あ、やっぱりこればかばかしいナンセンスもののドラマだったんだ・・・
っていうところにオチを持って行ったのは、
鈴木おさむさんのセンスなのかなあと思います。
ポカンとした感じで終わりを迎えたのですが、
ある意味このドラマらしい納め方だったのかなあという気もします。
そういうところも含めて、気楽に楽しめるドラマでした。
これ、深夜ドラマだからこそ遊べた部分もあったのでしょうが、
プライムタイムやゴールデンタイムでも十分に通用したんじゃないかな。
「スーパーサラリーマン左江内氏」がゴールデンで放送できたんだから
案外いけたんじゃないかなあと思うんですがね。

伊藤君の安定したいい人ぶりと
エグウザルトン社長の岸谷さんの怪演はもちろんのこと
ヒロインの新川優愛さんがとてもかわいかった。
それからびっくりしたのがメイプル超合金の安藤なつさん。
この役がとにかく魅力的でかっこよかった。
こういうキャラ好き~。
安藤さん、ドラマまた出てくれないかなあ・・・。

とまあ、あんまり話題にはのぼらなかったけど、楽しいドラマでした。



過保護のカホコ

脚本が遊川さんだったので、
いつ暗転するか、ドロドロ劇に陥っていくのか・・・
と心配しながら見ていたんですけど、
見事に最後までほんわかテイストのまま終わって
よかったなあと思いました。
最後はある意味大団円で、逆に物足りないほど。
いやいや、みんなハッピーで終わるお話はとても気持ちのいいものです。
特に主役の二人、カホコと麦野くんがかわいかったので
二人が幸せに終わって本当によかった。
カホコは極端なキャラクターでかなり作り込まれた人物なので
やりようによっては現実離れした浮いたキャラクターになりかねないところを
高畑さんは本当に巧い案配で演じられたなあと思います。
ちっちゃい身体でよく動くんだ。これが!
最近毒親もの、特に娘と母親の関係を描くドラマがポツポツと作られていますが
それを最後まで明るくポップに描ききったのはすごいなあと思います。
このテーマだったら重く扱いたくなりますもんね。
カホコの極端なキャラクターを引き立てたのは
間違いなく麦野くん。
こちらもとてもかわいい人物造形になっていました。
初回こそひどい奴だったんですけど、
その部分を嫌みなくさらっと演じて、
カホコに心開いてからは本当に理想のパートナー。
結構カホコって自分勝手で、身内のいざこざに平気で麦野くんを振り回しているのに
一生懸命力になってあげていたり
客観的なアドバイスをカホコに与えたりするのがとても素敵でした。
高畑さんは小さいのに竹内くんは大きいからその手足の長さが引き立って、
また、麦野くんってオーバーアクションが多かったりするから
なんか本当に二人のシーンのバランスがよくって
見ていて楽しかったんです。
今回右肩上がりで指示を延ばしたのはこのドラマだったのもなんかわかる。
カホコが過保護に育てられたことのマイナスだけを描かずに、
だからこそ人一倍愛をもって人に尽くせるという人物だと描いたのが
一つの勝因だと思いますが
その世界観を魅力的な演技で支えた主役二人に拍手!

一方、このドラマって大人世代の描写は結構辛辣だったんですよね。
誰も彼も大人になりきれていない感じで。
もちろんこちらも結構極端な人物造形がされていたんですけど
それを個性的なベテラン俳優さんたちがかっちりと演じられていたので
より主役二人の演技がみずみずしく浮かび上がったんですよね。
大人世代で特に好きだったのはお父さん。
普通、こういう話だったらお父さんって陰が薄くなりがちなのに
妻に意見が言えないダメ親父として
ナレーションで饒舌に語っていてそれがとても面白かった。
愛情だけはたっぷりあるんだけどね、
ここぞと言うときにちっとも頼りにならない。
時々、おっ、言えたやん! って思うシーンがあっても
それは妄想だったりして、最後までシャッキリとはしないお父さんでした。
お父さん視点のナレーションで物語を進めたのは
普段あまり思っていることを口にしないために何考えてるかわからない
もっといえば家族のことちゃんと考えているかどうかさえもわからないお父さんも
ちゃんといろいろ考えているんだよ・・・という遊川さんの思いがあったのかもな。
最終回、なぜかお母さんが風邪引いて声が出なくなって
お父さんが全部代弁していたのも、
最終回にほとんど活躍できないお父さんにちゃんと居場所を作ってあげている感じもしたもんな。
そして誰も聞き取れないお母さんの言葉を
見事に瞬時に解してみんなに伝えられるっていうことは、
お母さんのことを本当に愛しているっていうことだもんね。
お父さんはカホコもお母さんも二人とも愛している、とずっと描いたことも
好感度が高かった理由の一つです。
お母さんは完全にカホコ>お父さんだったけどね。

最終回でなんとなく不満が残ったのは、
まだ学生で経済力がない二人が簡単に結婚を選んで
それを親戚がすぐに賛成したこと。
それからカホコが選んだ世界が
結局すごく狭い親戚という世界の中で完結してしまうものであったこと。
でも、まあ、それもいいのかなあと思う。
必ずしも女性がバリバリ働いて社会に進出して行かなくちゃならないってことでもないし。
ただ、やっぱり麦野くんが画家志望で、
そこでも収入という点では大きな不安があって、
カホコが働くと決めた職場も、親戚のお手伝いで
やっぱりどこか金銭的な面を軽く扱っているのが引っかかったんだけど・・・。
カホコは自分の今までの貯金をあっさりとおばさんの借金の為に差し出したけど、
「お金がいらない」と言えるのは、
親に生活の全てを支えてもらっているからで、
最終的に金銭面で親に頼らざるを得なかったら
本当の意味での自立はできないのだと思う。
もちろんじいじの家に住むから家賃はいらないし、
家事をやっているから食費も出してもらえているかもしれないけど、
それでも何となく大丈夫か・・・? という気がしてしまう。
全てが丸く収まっているように見えた中で
その辺だけちょっとひっかかったのが残念。
でも、本当に久々に遊川作品で面白かったあ・・・と思える作品に出会えました。