カーネーション 果報者

結構この辺は1週間でひとまとまりではないんですねえ。
ただ考えてみれば前週「移りゆく日々」で世代交代というテーマのラストが、
お父ちゃんが鮮やかに己の始末をつけて糸子に店を譲ったところできれいにまとまって
「果報者」という題を冠したこの週が譲られた側の糸子の描写から始まる
というのは、
ある意味サブタイトルとリンクしている。
ありがちな展開で、前週のラストを受けて
今週は糸子が新しい店を切り盛りしているところから話が始まったりすると、
やっぱり描写としては薄かったんだろうと思います。
一歩踏み込んでおばあちゃんと二人きりになってしまったその夜をしっかり描いたことで
自立したことの重みがよりくっきりと視聴者の印象に残ることとなった。
本当に、どこを丁寧に描くか、どこを飛ばすかをしっかり考えてある作品だなあと思います。
この週のド頭のアバンは、お父ちゃんが看板を見上げるシーンからだったのだなあ。
お父ちゃんにも店を開いて自分で看板をあげるという華やかな時代があって、
そしてそれはとても誇らしい記憶だった。
今、自分の時代が終わって、娘に看板を譲る・・・その複雑な思いが
看板を見上げるその表情一つで語られていました。
自分に贈られた看板を見ながら、
おばあちゃんがおとうちゃんの思いを代弁します。
おなあちゃんはお父ちゃんの母親だったんだよなあ・・・と改めて思いました
なんとなく心細い思いをしていると、お母ちゃんがひょっこりやって来ます。
張りつめていた空気が、お母ちゃんの登場で一気にゆるみます。
相変わらずのマイペースなお母ちゃん。
知らぬこととは言え、看板の上に座ったりなんかして。
でもそんなお母ちゃんだからこそ、
糸子はお母ちゃんの前で思い切り子供のように泣くことができました。
お父ちゃんは自分の筋を通してこういう形で糸子に看板を譲ってかっこつけたけれど、
糸子は別にこういう代替わりを望んでいたわけではありません。
その戸惑いや不安をお母ちゃんの腕の中で吐き出して、
糸子は小原洋裁店の店主になりました。
春になって、自分の看板をあげた糸子の誇らしげな様子。
お父ちゃんも祝いの酒を持ってやってきます。
久々に会った第一声が
「お前、肥えたな」
なのはお父ちゃんらしい。
看板を譲った惣領娘に、餞の言葉も激励も無く、
近所のおっちゃんを誘って酒盛りに入ってしまいます。
それでも近所の人たちみんなから祝われて、
この上なく幸せなスタートとなりました。
後にこの時の幸せで誇らしげな光景は
何度も様々な思いで思い出すことになるんだなあ。
華々しい開店だったけれども、
順調なスタート・・・とはいかないのが現実。
二つの店をあんだけはやらせたのに
なんで自分の店になるとあかんの?
と思っていると、生地屋時代のお客さんがやってきた。
けれども洋裁の仕事ではなく、
生地屋で買って来た服をただで裁断してくれと言う。
因果応報・・・ということでしょうか。
昔、駒ちゃんにただで洋服を作ってやったことの意味が、
あの時お父ちゃんが泣いて悔しがったことの意味が、
本当に理解できた糸子でした。
一つのエピソードをそれだけで終わらさずに、
間をおいて描くことの多いドラマですよね。
だからこそ、物語に厚みが出るんだなあ・・・。
窓拭きだって、ちゃんとずっと
たてたてよこよこで拭いてますもんね、糸子。
そして思いがけない形での勝さん登場。
勝さんが神戸のおっちゃんを使って糸子と接触してくるとは!
初見の時は驚いている間に話が進んでたんだけど、
改めて見ると、勝さんのしたたかさに気付きます。
糸子に直接アプローチしても反応がないと見た勝さんは
身内を使ってきたんですね。
当時としたら、ある意味正当な戦略。
恋愛結婚がまだ珍しかった当時、
結婚したかったら周りから・・・というのはそう特別なことではないだろうけれど、
おじさんから・・・というのがすごい。
しかも、そのおじさんも、仕事でたまたま出会っただけの関係。
そのおじさんをあれだけ動かすと言うことは
やっぱり勝さんって天性の人たらしなんだなあ。
結局おじさんから言ってもらうだけでは鈍感な糸子に響かず、
おじさんがおじいさんを動かし、
おじいさんがお父ちゃんを動かして、
おじいちゃんとお父ちゃんが揃って糸子を説得・・・という
思いもしない展開に。
確かに勝さんの提示した条件って、本当に小原家にとっては願ったりかなったり。
長男だけど廃嫡して婿養子に入る。
糸子は仕事を続けてかまわない。
自分は洋裁の腕を持っているので一緒に仕事ができる。
男性ものの洋服が作れると客も増えるだろう・・・。
(当時男性用の洋服はすでに広まりつつあったというのは
ロイヤル時代に説明があった)
話を聞くうちにおばあちゃんもすっかり乗り気になって、
三人で糸子を説得することに。
けれども糸子は結婚なんて眼中になくて、
今は仕事をがんばりたい気持ちばかり。
そんな糸子の気持ちも知らず、
喫茶店で働く幼なじみと一緒に糸子の結婚をあちこちで吹聴して回り
周りはすっかり糸子が結婚するという雰囲気に。
奈津まで「結婚するんやったらうちでやってや」と言いにくる始末。
結局周囲に押し切られるまま結婚を決めたものの、
やっぱり乗り気でない糸子。
反動で仕事にのめり込みます。
またまた翌日までという無理な期日の仕事を受けて足を痛めたり、
足を休ませないといけないのに
どんどん仕事を受けたり・・・。
挙げ句の果ては、結婚式翌日の納期の
病院の看護婦さんたちの制服という大仕事をとってきて、
肝心の結婚式に大遅刻をしてしまう。
ここで活躍するのが奈津。
足が痛くて動けない糸子を背負って連れて行ってくれるという大活躍。
「ぶた!」
という情け容赦のない罵倒つきだったけれどね。
しかも、花嫁衣装を忘れるという大失態の糸子に、
自分の花嫁衣装を貸してくれるという大盤振る舞い。
この辺りの糸子と奈津の絆の強さというか、
反発しながらもお互いを思う情の厚さはやっぱり特別なんだなあと思う。
この恩は後に返すことになるんだけど、それもまた後の話。
花嫁が来ないのに先に宴会を始めちゃうお父ちゃん。
場がすっかりできあがった頃にようやく糸子が登場するものの、
みんな酔っぱらってて、糸子がきたことにもすぐには気付かない。
本当ならとんでもない状況なんだけど、
それでも怒らない勝さんってすごい。
勘助が酔っぱらいながらくだらない宴会芸をしてて
泰造兄ちゃんや八重子さん、安岡のおばちゃんがいて、
神戸のおじいちゃんおばあちゃんがいて
近所のおっちゃんおばちゃんもいて、
大好きな人たちが一同に会して笑っている・・・その幸せな光景。
みんながいることに幸せをしみじみと感じるのは
それだけで涙が出そうなくらい切ないのは
この先の展開を知っているから・・・。
「うちは果報者です」
という糸子のナレーションとともに、
前半部分の一番の幸福のクライマックスというべきシーンで幕を閉じた週でした。
これからいよいよ長い長い戦争の日々が始まります。


カーネーション 移りゆく日々

お相撲の放送で2週間とんだ後、国会中継で一日お休みで、
ようやくようやく放送が再開された今週、
木曜にはサッカーのワールドカップの選手発表があって、
一日分だけの放送となりました。
お相撲で中断の時には律儀にお相撲を15分×2回分録画し、
国会中継の時には録画もお休みしてくれていたうちのビデオデッキ。
(あ、もうビデオデッキとは言わないか録画機?)
なんでかわかんないけど、よりによって42話を飛ばして
43話を2回録画してました。
なんで? なんで? どうしてそういうミスが起こるの?(´;ω;`)
仕方ないので前の再放送の時に録画していたのを引っ張り出して
42話を見たんだけど、
未だになんでこんなことが起こったのかわからない。
あんまり録画ミスってないんだけどなあ。
放送日程が結構変動する深夜でも追っかけてちゃんと録画しているのにぃ・・・

さて、気を取り直して感想を。
この週も2週分か、3週分のような内容と記憶していたのに、
わずか1週間で描ききっていることに驚いています。
ロイヤルでの後日談も、生地屋を繁盛させるのも、
お父ちゃんが殴るのも、看板を譲られるのも全部この週のことだったんだな。
特に生地屋のあれこれはなんだかとっても印象に残っていて、
何にもなかったところから糸子の才覚だけで客が列をなすようになる・・・というのが
本当に面白くて、たっぷりと楽しんだ記憶があるのでびっくり。
でも、はしょった、とか、駆け足だった・・・という気はまるでしないんですよね。
最初たった一人のお客さんから横につながって縦につながって・・・
その課程を、違和感なく時間経過を感じさせながら描いていく巧さ。
時間の描き方がすごく上手いんだな・・・。

この週は糸子が二つの店を繁盛させていく課程をおもしろおかしく見せながら
世代交代を描く週でした。
まずは奈津。
奈津の父親が亡くなったのは前の週に描かれていました。
決まっていた縁談は、喪中のため式も挙げられないまま結婚することになったと
糸子は人づてで聞きます。
糸子の関心は、結婚式も挙げられへんでかわいそうやなあ・・・でもなく、
結婚相手はどんな人なんやろう・・・でもなく、
ただひたすら父親の死を奈津は泣けたのか、ということのみ。
それは奈津が辛いときに泣けない意地っぱりだと知っているから。
その奈津がこの週でようやく泣けます。
糸子はしらないだろうけれど、
視聴者はこの奈津の涙が純粋に父親を亡くした悲しみからだけのものではないことを知っている。
祭りの日、まいごを見つけたら、その子は泰蔵兄ちゃんの子供だった。
ここで初めて奈津は泰蔵とちゃんと言葉を交わすのだけれど、
泰蔵は奈津のことを最初から「なっちゃん」と呼んだのだ。
奈津はずっと自分がちびやから泰蔵兄ちゃんの目に入っていないのだと思っていた。
泰蔵が自分に気づきさえすれば、自分の恋は叶うのだと思っていた。
糸子にこの思いを話してから時は経ち、
泰蔵は結婚し、自分にも縁談の話があるなかで、
ずっとそのまま信じていたとは思いがたいけれど、
心のどこかで、泰蔵が自分の存在に、自分の思いに気づきさえすれば・・・
という思いは消えずにあったのだと思う。
けれど、泰蔵兄ちゃんは自分を知っていた。
自分が吉田屋の奈津であるということを知っていた。
べっぴんさんだと言ってくれた。
これで、奈津の初恋は終わってしまった。
泰蔵兄ちゃんが自分に気づいてくれたら、
自分を好きになってくれたら、
自分はどんなことをしてでも両親を説得して結婚しようというという思いはあったのだと思う。
泰蔵兄ちゃんは大工で商売には疎いだろうけど、
自分が女将としてしっかりささえれば大丈夫・・・なんていろいろ夢想していたかもしれない。
だけど、泰蔵兄ちゃんは自分を知っていたのだ。
自分の存在を知った上で、他の女と結婚してしまった。
奈津の恋の大前提は崩れてしまったのだ。
これで奈津の逃げ道はなくなってしまった。
吉田屋の跡取りとして始めから運命が決められていた奈津。
その運命に逆らうつもりは毛頭ないけれど、
結婚は自分の意志が反映できるかもしれない数少ない要素で、
幼い頃から憧れていた泰蔵は夢だったのだと思う。
だけどかすかに残っていた夢が消えてしまった。
父親を亡くし、自分を絶対的に庇護する存在は消えてしまい。
夫を亡くして不抜けてしまった母の代わりに、
結婚して吉田屋を切り盛りせねばならない。
幼い頃からの初恋もなくしてしまった今、
奈津はたった一人で重い看板を背負って生きて行かなくてはならない。
奈津の涙は、親に守られ、夢見ることを許されていた少女時代との決別の涙だったのだと思う。
そして、やはり安岡のおばちゃんの前でしか泣けなかったんだろうと思う。
泰蔵兄ちゃんの母親であり、
幼い頃から自分を知ってくれているおばちゃんだからこそ涙を見せることができた。
糸子は奈津の複雑な思いに気づいてはいない。
ただただ、奈津はいじっぱりやさかい、
お父ちゃんが亡くなって悲しいはずやのに人前では泣けへん、と思っいて、
その奈津が安岡のおばちゃんの前では泣いたということだけを強烈に記憶する。
この思いこみが後に奈津も安岡のおばちゃんも救うことになって、
このシーンもその時に鮮烈に思い出すことになるのだけれど、
それはもっと後の話。

奈津が父の死、結婚によって、外的要因から必要に迫られて看板を継ぐ
(自分で切り盛りし始める)のに対して、
糸子は自力で看板を勝ち取る。
2件の店を繁盛させたら、独立して洋裁店を開くことを許してやる
という父親の一見意味のなさそうな、思いつきのような条件をクリアするため、
睡眠時間をけずって働く糸子。
そして実際に2件の店を繁盛させる。
一方、お父ちゃんはというと、夜、外での飲み歩きがひどくなるばかり。
商売そっちのけで酒を飲んで遊んでいるお父ちゃんに糸子は反発します。
それでもロイヤルをやめるときは、まだ「お願い」でした。
「やめさせてください」「自分で洋裁店をさせてください」と
許可を求めるお願い。
それが、生地屋をやめるときは、お願いではなく宣言。
もうお父ちゃんの言うことは聞かへん。
うちはうちでやっていく、という宣言。
父親の(あるかなきかのではありますが)庇護のもとから出るという宣言。
今まで糸子は何度も何度もお父ちゃんにお願いをしてきました。
何度も何度も殴られたり蹴られたりしてきました。
でも、この時のお父ちゃんのビンタが特別だったのは、
これが糸子の自立の宣言だったから。
このシーンの張りつめる空気感すごいし、
妹たちは本気でおびえた顔してるし、
やっぱり名シーンですね。
頬に指の跡が残るくらい女優の顔をひっぱたける小林薫さんすごいし、
くらいつく尾野さんもものすごい。
殴られたあとお母ちゃんにケーキを手渡されて
ふるえながら口に運ぶ様子のリアルなこと。
あの時代、癇癪持ちの父親に逆らうことの恐怖感、とか、
怒りとか、憤りとか、悲しみとか、興奮とか
なんかそんな感情が入り交じった感じが伝わってきました。
おばあちゃんが気丈にひっくり返されたケーキを包丁ですくって、
「大丈夫や、味は変わらへん」というところ好きだったなあ。
お父ちゃんの顔も見たくない糸子は、この後神戸へ逃げ込みます。
ところが逃げ込んだ先の神戸でも世代交代は進んでいました。
おじいちゃんは引退し、おばあちゃんもすっかり老け込んで、
神戸の家の主体は伯父夫婦に変わっていました。
実は私、初見の時は、お父ちゃんに殴られるシーンよりも
こっちのシーンが印象に残っていたんですよね。
おばあちゃんにお菓子をわたしながら、
「この人たちはもううちを守ってくれる人ではなくなったんやなあ」というモノローグが
とてもとても印象的で。
人は自分は守られる側から守る側になったと思った時に大人になるのかもしれません。
糸子は父親に独立宣言をしたときに、
自分が守られる存在ではなくなったことを知るのだなあ。
奈津は父の死と初恋の終わり(と結婚)で大人になったことを知り、
糸子は父を乗り越え、祖父母の老いを感じて大人になったことを知る。
ここからしばらくは、この二人の人生は写し鏡のような軌跡を描いていきます。
同じような人生の転機を迎えていく二人の生き方の対比が見事。
糸子の人生を相対化してくれるのが奈津の人生なんでしょうね。

お父ちゃんの鮮やかな代替わりの態度は、
次の週の「果報者」にかけて描かれます。
潔いけれども、どこか大仰で芝居がかっているのは
こうでもしないと格好がつかなかったからなんでしょうね。
7人家族を食べさせていくのは大変でも、
2人分やったらなんとかなるやろ・・・というのは
泣かせるではありませんか。
娘の門出に、いきなり一家全員の生活を背負わせないようにとの配慮。
とは言え、やっぱりこれも見栄だったんだろうと思うんですよね。
看板はやるけど、一家の長はわしや、という。
糸子に今の家族を支えているのは自分の稼ぎや、と言われたのが
よっぽど堪えたのでしょう。
妹3人と夫婦で5人分の生活費稼ぐのも大変だろうと思うのですが、
そこはお父ちゃん、ぬかりはなかった。
知り合いに紹介してもらって仕事と家をちゃんと用意していました。
この人、以前娘さんの嫁入り支度をまかされて、
お金が用意できずに断ったお客さんですよね。
自分の商才のなさを突きつけられた仕事をくれた人に、
自分の看板をおろすための算段をしてもらうっていうのも
なんか感慨深いものがありますね。
それでも、一回大きな不義理をしているのに
職を紹介してもらえるなんて、お父ちゃん案外人望があるんですね。
見栄っ張りとは言え、それなりにきちんと人付き合いしてきた成果なんでしょう。
この、お父ちゃんが築いた人の輪に糸子が助けられることがあるんだけど
それもまた先の話。
糸子は7人もの家族の生活を背負う必要はなくなった代わりに、
妹たち(お母ちゃんも?)という戦力も失うことになってしまった。
その部分はお父ちゃんがにやにやして
「そんなに言うんなら自分の力で全部やってみい」
と言っているような気がしなくもない。
でもおばあちゃんを残してくれたのは
やっぱりお父ちゃんの優しさなんだと思うんですよね。

それにしても、ほんっとに密度が濃いなあ・・・。


カーネーション 乙女の真心

そうかあ・・・この週は「乙女の真心」ってタイトルだったんだ・・・と改めて。
駒子とサエという二人の女性に洋服(ドレス)を作る週。
それぞれの抱える秘めた思いを洋服に込めて作り上げる話。
記憶の中では駒子とサエのエピソードは、
それぞれ1週間とってあると思っていたんですよね。
まさかこの二人のエピソードが1週にまとまっていたなんて!
しかもその隙間隙間で勘助の初恋話があったり、
ナツのお父ちゃんが亡くなったり・・・。
なんでこれだけのエピソードが週間分の時間枠の中に収まるんだろう・・・。
決して詰め込まれた感じはしない、駆け足であらすじ的になってしまうわけでもない。
記憶の中でそれぞれ1週間分あったって思ってたくらい密度が濃いのだから。
かといって安易に話が展開するわけでもないんですよ、これが。
駒子の洋服づくりもサエのドレスづくりも試行錯誤の時間がきっちりとあって、
だからこそ出来上がりに感動する。
駒子やサエが感動する・・・という流れはもちろんなんだけど、
テレビを見ている私たちもいちいちジン・・・ときてしまうくらい感動する。
安易に物語が進行していたら、この駒子やサエの感動を視聴者が共有するのは難しい。
物語の構造としては、この二つのエピソードが並んでいるのは意味深いんですよね。
駒子との仕事で、糸子は着る人に本当に似合う洋服をつくる、
というオーダーメイドにもっとも必要なことを実践で学ぶ。
そのためにお客さんとコミュニケーションを重ねて、
相手が何を望んでいるのかをしっかりつかんで、その思いを服にしていく。
根岸先生に教えてもらった洋裁の理念を身をもって知る。
けれどもまだ未熟な糸子はお客さんとの距離感を誤ってしまう。
お客さんと親しくなるあまり、友達になってしまった。
だからこそ「お代はいい」という言葉が言えた。
でも、お客さんとお友達は違う。
お客さんの要望を真摯に聞いて真意を慮るというのと、
お客さんと仲良くなってお友達になるというのは違うのだ。
思えば、お父ちゃんはそのこと何となく気づいていたんだな。
初めて駒子を見たときに、糸子の友達が遊びに来ていると勘違いしてたもんな。
すでにその段階から糸子はお客と職人の関係を踏み越えていて、
だからこそお客さんをお客さんと思えなかったんだろうな。
一方サエは最初の出会いが最悪で友達になんてなり得ないところからのスタート。
コミュニケーションのとりづらい(もしくは取りたくない)相手に商売することに気乗りしない糸子。
同僚(勝さん)に「これは大きな商機」と諭されてやっとやる気を出すものの、
サエのいい加減な態度に激昂、大喧嘩してしまう。
本放送を見ていたときは、もうそのまま糸子に感情移入して
サエに腹をたてて、糸子、よう言うた!!
と思っていたのですが、よくよく考えてみると、すごいですよね。
洋裁の職人として駆け出しの糸子が、
イブニングドレスがどんなものかも知らなかった糸子が、
うちが日本一のイブニングドレス作ってやるから
それ着て、そのドレスに似合う踊り子になり!
みたいなこと言えるとは!
この辺の図太さが糸子らしいなあと思うし、
未熟ながらに職人としての矜持をしっかり持っていることをすがすがしくも思う。
何にしろ、糸子のこの情熱に動かされてこれ以降、サエは協力的な客になり、
素敵なドレスができあがりました。
今度はきっちり客と職人という関係を貫けたわけです。
ただこれからサエは友人としてつながっていくんですけどね。
サエがそこまでドレスをほしがった原因となった憧れの男性、
それがよりにもよって春太郎だった・・・という落ちでこの週はまとまります。
春太郎この辺り大活躍ですね。
気を抜いたら思いがけないところで登場する。
この春太郎との腐れ縁は終盤まで続いていい箸休めになってくれます。
感動のシーンの後に「はるたろーーーーっ!」と落とす緩急の付け方が本当に見事。
前週のエピソードが成功→失敗であったのに対して、
この週は失敗→成功になっているのもよく考えられているなあと思います。
サエとの出会いのきっかけとなった勘助の初恋。
これもまた後になって触れられます。
いつもは糸子が勘助の異変に気づくのに、
この時は安岡のおばちゃんが相談に来て初めて気づいたんだなあ・・・
ちょっと感慨深いです。

それからこの週は糸子が「時の流れ」に気づく回でもありました。
奈津のお父さんが倒れ、
風邪をひいて寝込むおばあちゃんに、時の流れを感じます。
絶対的な存在として自分を庇護してくれた大人たちが、
次第に年老いていくことをある時ふと感じる。
これはきっとタイミングが違うだけで、誰もが感じることではないでしょうか。
このふっと見逃しそうな思いをしっかり取り上げて、
糸子に淡々と語らせているシーンはすごく好きなシーンの一つです。
この感情と、お父ちゃんが酒浸りになっていることを忌々しく思っているのは
きっとつながっているんですよね。
商売人として傾いた家業を立て直すこともせず酒に逃げるお父ちゃん。
自分が商売人として未熟だということも父の失望の一端だとわかってはいても、
父の逃げが感情的に許せない。
神戸のおじいちゃんおばあちゃん、もしくは近所のおじさんおばさんに対しては
単純な感傷ですまされるものも
一家の大黒柱で自分の行動を命令し制限する父親に対しては
もう少し生々しい思いがどうしてもわき起こる。
この思いは次週につながっていくわけですね。

この週はお母ちゃんが活躍した週でもありました。
お母ちゃんがお金持ちのお嬢さんだったこと、しっかりと証明しましたね。
朝早くに、糸子が作ったイブニングドレスの試作品を来て、ダンスを踊る姿の優雅なこと!
聞いてみればイブニングドレスのこと知っているどころではなくて、
若い頃何着か自分用に作っていたと言うではありませんか。
わざわざ神戸のおばあちゃんとこまで行かなくても
こんな身近に知ってる人おったやん~。
とは言え、どうやって身体にぴったり合うように仕立てたん?
という問いには、忘れたわ・・・と全く頼りにならないんだけどね。
ま、それがお母ちゃんなんだなあ。
でも、考えてみれば、狭い家の台所で、割烹着着て、
眠そうに目をこすりながら家族の粗末な朝ご飯を用意しているお母ちゃんが
普通の口調で昔何度も舞踏会に行っていて
イブニングドレスも何着も作っていて、
当時そのドレスを作っていたのは外人さんやったなあ・・・
と語るって言うのは、すごいことだよなあ。
その口調には昔はよかったというニュアンスも、
今が不幸だと思わせるトーンも全くなくて、
かといって昔は昔、今は今という積極的な割り切りでもなくて、
ただただお母ちゃんはお母ちゃんの人生をこういうもんとして受け入れている感じが
この人のある種の懐の深さみたいなものを感じさせてくれる。
ぼーっとしているだけなのかもしれないけどね(^_^;)
でも、お母ちゃんの口調にはお父ちゃんと駆け落ちしたことを
微塵も後悔していないんだろうなあという感じがあるんですよね。
だからこそ糸子たち娘たちもくったくなく神戸のおじいちゃんおばあちゃんに甘えられるんだろうなあ。

というわけで、お相撲で2週間お預けになっていましたが
いよいよ再放送再会です。
そして、次はあの伝説のエピソードが出てくるんですよねえ。
というか、1週間分であそこまで話が進んじゃうのか・・・。
やっぱり密度が濃いよなあ、このドラマ・・・。