山田孝之のカンヌ映画祭

いやあ、ぶっとんだドキュメンタリードラマでしたねえ。

最初「東京都北区赤羽」みたいな感じかなと思って見始めたから

途中キツくてキツくて、何回か見るのやめようと思いましたもん。

「東京都北区赤羽」の冒頭数回のキョーレツな山田君が

ずーっと出ている感じ。

いや、もっとパワーアップしてる。

こうと思い込んだら人を巻き込んで強引に物事を進めてしまう山田君。

「東京北区赤羽」は、強引に赤羽に移り住んだ後、

赤羽のもっと強烈な個性を持つ人たちに出会って変わっていく山田君

っていう流れを見せるドキュメンタリードラマだったから

それなりに楽しんでみていられたんですよね。

でも、今回はがっつり暴走する山田君だったから…。

 

前半はまだ笑ってみていたんですよね。

自分はまだ賞を取っていない、だから賞を取りたい、

どうせならカンヌの賞を取りたいっていうスタートもバカバカしかったし、

カンヌで賞を取るために映画学校に勉強しに行ったり、

脚本もできていないのに、みんな自分たちが何を作ろうとしているのかわからないまま

なんとなく雰囲気だけのパイロットフィルムとかポスター作っちゃったり、

それ持ってカンヌ行って、関係者に話聞いて回ったり…。

どこまで本気なんだ? ってずっと思っていました。

エネルギーと行動力はすごいけど、

労力をかける方向が明後日向いちゃっている感じに、

最初は笑ってみていたんだけど、後半が笑えなくなっちゃって、

これどこに着地するのかなあってはらはらしながら見ていました。

このドラマの監督である松江さんをツイッターでフォローしていて、

放送の度に監督の視点からの思いをかなり積極的にツイートされていたので

それ読んでいたから、とりあえずはどこかに着地するんだろう…と思っていたんだけど

監督のツイートがなければ山田君のこと大嫌いになって途中で見なくなっていたかも。

それくらいひどい奴でした、この作品の山田君。

松江監督はドキュメンタリー畑の監督で、「東京都北区赤羽」以外だったら

最近では「その「おこだわり」、私にもくれよ!!」を撮ってます。

「その「おこだわり」」…は完全にドラマとドキュメンタリーの中間を狙っていて

台本もあったそうなんですけど、「カンヌ」と「赤羽」は台本がないんじゃないかな…。

山田君がボンボンと放り込んだネタに周りがどう反応して動くかを

じっとカメラで追っかけて行って、すべてが終了した後松枝さんが編集して作品にしている感じ。

つまりカメラが回っている間は誰もこの顛末を知らないまま、

ただただ暴君である山田君に振り回されていたんじゃないか…っていう風に見える。

でも、その場その場すべてでちゃんとカメラは回っているわけです。

山田君はそれを承知の上で、あの言動をしているわけです。

自分をよく見せたいとか、俳優のイメージを崩したくないっていう思いがあったら

絶対あんな言動はしないと思います。

また、一つ一つの無茶ぶりも作品のエピソードの一つという認識もあったと思います。

だからかなり計算の上で、

「山田孝之のカンヌ映画祭」の中の山田孝之を演じていると思いながら見ていたんですけど、

最終回の涙を見て、ありゃりゃりゃ? とわかんなくなりました。

もしかしてかなり本気で、あの調子で映画が作れると思ってた?

現場が崩壊したことに、本気で傷ついてた?

えーっ、え? え? ちょっとまって、どこまでが計算でどこまでがフィクションなの?

と、パニクってしまいました。

でもまあ、それも含めて山田君のねらいで、

すっかり山田君の掌の上にのせられているのかもしれない。

 

とりあえず、このドキュメンタリーを見て腹が立ったこと。

映画をバカにしているなあって感じた。

映画の中身云々よりもカンヌで賞を取るには…という外堀から入っていく感じとか、

カンヌ受けしそうなパイロットフィルムをイメージだけで撮っちゃう感じとか。

それもって堂々とカンヌ行って見せている感じとか。

見ていて恥ずかしくなるくらいでした。

でもそれだからこそ、この辺はあえてそういう偏った人を演じているのかなあって思ったんですよね。

きっと映画業界の中にはこういうタイプの人が少なからずいて、

山田君たち役者や山下監督たちクリエーターを振り回しているんだろうなあって。

山田君があえてその役を演じることで揶揄しているのかなあって。

そういう見ていてちょっとはらはらしちゃうカンヌお勉強編は

カンヌの常連である河瀬監督が締めてくれました。

山田君の勢いにのせられて浮かれちゃっている山下監督ともども

ぴしっと映画作るってそうじゃないでしょ! って言葉で諭して、

それから自分の現場を見せることで示してくれた。

河瀬監督のポジションって「東京北区赤羽」の大根監督のポジションですよね。

子供たちの悪ふざけに、ぴしっと雷を落としてくれるまっとうな大人。

 

河瀬監督の現場を体験して何かをつかんだかに見えたのに、

こっから山田君の行動がどんどん暴走するという…orz

この辺から見ていて余計にいらっとくるようになったのは

私が脚本というものにとても興味を持っているからだと思います。

脚本をないがしろにする態度に腹がたって、腹がたって…。

世の中には脚本を書かずに映画を撮る監督がいることは知っています。

でも、その特殊な状況を支えるために、その監督は何らかの手段を用いているはずです。

映画は大勢の人が関わってできる芸術だから、

作品のイメージを共有するためにはやはり何らかの指針が必要なんです。

脚本はそのためのとても有効な手段で、それをたたき台にして議論しながら

一つの作品を作り上げていくんでしょ?

本来いい作品を作り上げるために一番労力をかけて、一番時間をかけなければいけないのは

山田君と山下監督がカンヌでやったというプロット作りの段階。

おおまかな筋はあるとはいえ、テーマをどうやって深めていくか、

それをいかに映像に落とし込んでいくか、

また、いかに映画的な効果を付加していくか。

それを脚本という形でまとめても、絵コンテという形でまとめても、

イメージ画という形でまとめてもいいんだけど、

せっかく練ったプロットを第三者の漫画家さんに丸投げしてイメージ画を描いてもらって

それをもとに映画を作りましょうっていうのは、ないよね。

山田君の考える作品像があって、山下監督が考える作品像があって、

それをカンヌである程度すり合わせたはずなのに、

山田君がそれを漫画家さんに丸投げしちゃって、

今度は漫画家さんの考える作品像が生まれて、

それをもとに映画撮れって、山下監督をバカにしてる。

素人の私が見ていても、こんなんで映画なんて撮れるわけがない!

と怒りに震えちゃうのに、なんとなーく現場は進んでいくんですよね…。

大事な議論は避けられたまま、オーディションをして、キャスティングして…。

 

もう一つ、私がこの作品でいらいらしていた部分はここです。

今、ニュースではやたらと「忖度」って言葉がはやっていますけど、

まさに、忖度ですよね。

スター俳優である「山田孝之」に対する忖度。

本来ならば、もっと早い段階でストップがかかって当然ですよね。

題材の選定、予算の問題、脚本がないこと…。

周りが、特に山下監督が、プロとしてちゃんとストップかけなきゃいけなかった。

でも、山田君が言うことだしなあ…っていう忖度が働いて

そのままずるずると現場が進んでしまった。

これが見ていて一番いらいらしました。

現実社会でもこういう忖度、いっぱいあるじゃないですか。

今、まさに、同じようなことが自分の会社でも起きていたので、

猶更ストレスがたまってたまって…。

山田孝之のばかやろーっと思った何分の一かは

会社の上司の行動が重なって見えた分です。

山田孝之じゃなきゃ、この状況は生まれなかったんです。

映画学校の先生たちも山田君だからああして話してくれたんだと思うし、

大手映画会社の人も山田君だから会って企画を聞いてくれたんだし、

河瀬監督も山田君だから叱ってくれたんだし、

芦田愛菜ちゃんも、長澤まさみさんも、

山田君と仕事がしたいから現場に来てくれた。

何より、山下監督も、かかわってくれた大勢のスタッフも

山田君だからかかわってくれたんだと思います。

すごいのは、売れている役者だから…というだけではないんですよね。

「山田さんと仕事ができると聞いて…」

と言った言葉の裏には、山田孝之とだったらなんか面白いことができそうな気がする、

という期待を持っていることを感じました。

山下監督だって、山田君の才能を高く評価しているからこそ、

思わず言いなりになっちゃうんですよね。

そんな山下監督に多少いらいらしながらも思い入れたっぷりに見ていたので

最終回手前で監督を解任されるくだりは本当にどうなることかと思いました。

山田君が言っていることは一見もっともに聞こえるんだけど、

やっぱりその前提が圧倒的に欠けてる。

山田君の主張は中学生や高校生がまくしたてる主張と同じで

うわべだけで理屈や理想論を言ってしまっていて、

その言葉を支えるものがなにもないから、何も生み出せない。

人を動かすことができない。

できたのは、人を傷つけることだけ。

なんども振り返り、もう一度話そうとする山下監督が切なくて切なくて。

そのやるせない怒りも、全身から感じて…。

ああ、これは紛れもなくドラマではなく、ドキュメンタリーだなと思った瞬間でした。

今、二人の人間の本気のぶつかり合いとすれ違いを見ているんだとわかりました。

最後の爆発には笑ったけど。

山下監督、ナイス!!

ちょっとすっきりした。

 

とりあえず、映画は作ったそうです。

カンヌにも出品したんだそうです。

山下監督はなんとか戻ってきてくれました。

再開する二人の間に入った芦田愛菜ちゃんの大人の振る舞いに惚れました。

この作品でだれよりも大人だったのは愛菜ちゃんだったのかもしれない。

この作品を見ていて、一番好感度が上がったのは芦田愛菜ちゃんでした。

最近の彼女の作品はどれもあまり好きではなくて、

芸達者なだけにちょっと鼻についてしまって苦手だったんですが

素の芦田愛菜ちゃんはものすごく素敵な女性でした。

人の気持ちをちゃんとわかるし、場の空気も読めるし、

大人の会話もちゃんと理解する聡明な少女。

凛とした居方も素敵で、画面に映える。

まだあどけなさもあるし、大人のような顔の時もあるし、

思春期特有のはかなさがあってとてもいいなと思いました。

学業も忙しいでしょうが、神木くんのように仕事を選びながら

その時々の姿をスクリーンに残していってほしいなと思います。

いわゆる天才子役の芦田愛菜の演技を期待されちゃうような作品じゃなくて

一人の俳優として大切にしてくれる監督の作品に出てほしいな。

とりあえず、愛菜ちゃんが受験に合格してよかった…。

こんだけ大人の勝手な都合に、大切な受験期の夏休み振り回されちゃって

これで落ちてたら目も当てられない…(>_<)

そして、私は、いつか上司に、愛菜ちゃんみたいに

「何がしたいんですけ?」

って言ってみたい~!!

嘘の戦争

これも最終回まで面白く見ました。

主人公は詐欺師でありとあらゆる嘘をついて人を欺くんだけど、

それでも主人公に心を寄せてドラマを見ることができたのは

すごいバランス感覚で、丁寧に主人公を造形したからだろうと思います。

まず、大前提として、子供のころに一番ついたらいけない嘘を

大人たちに強制的に言わされたことが原体験にあるということが大きい。

これは、かわいそうだな、とぐっと心を引き付けられますよね。

そして、この過去が要所要所で繰り返される。

すると、主人公が何をしても主人公に大義名分が成立していくんですよね。

とは言え、主人公の復讐劇も決して行き過ぎにならないように配慮はしてあって

そこがまた、この主人公は決して悪人ではないんだな…と視聴者に印象付けていく。

その辺の人物造形には草薙くんの持つ誠実なイメージも上手く作用したように思います。

決して根っからの悪人ではないとは言え、大半はクールで冷徹な面を見せる役。

そして、時にはそのクールな殻を破って感情を爆発させる役を

本当に上手く演じたなあと思います。

SMAPの中で、一番役者として好きなんですよね、草薙くん。

いろんな役ができる。

それも、きちんと草薙君でしか出せない雰囲気をプラスしながら

実在感のある人物を作り上げるのがとてもうまい。

 

それから、復讐が行き過ぎない…というのもよかった。

基本的には完膚なきまでに叩きのめしていくんだけど、

非難される要素はあるけれども、同乗の余地のある人物に対しては

ある程度の配慮が感じられた。

特に終盤の三瓶に対しては、そこまでしないで~っていう視聴者の思いを裏切らない形になって

そこはよかったなあと思います。

計算で人を操って嘘をついて人を陥れていくけど、憎みきれない…というぎりぎりの線を

きちんと見極めながら描かれていたからこそ、勧善懲悪ものとして安心して見られました。

 

また、悪は最後まできちんと悪として、

二科興三に罪を認めさせるところまで持っていったけれども、

ドラマの中で常に表にたって対立していた二科隆は

悪としてではなく、その立場にたったものが仕方なく選択した行動

という形で描いたのもよかった。

基本、二科家の三兄弟の描き方は好きでした。

楓は最後まで汚れなきヒロインとして純粋さと正義感を持ってえがかれたし

どうしようもない兄貴である晃は、自分の罪を自覚し悔いるところまで描かれた。

特に晃はあまりにバカすぎて、安田さんが魅力的に演じられていることもあって

憎むに憎めない人物になっていただけに、

最後の最後で一之瀬を助ける側に回ったのがすごくすがすがしかった。

そしてなんといってもキュートだったハルカ。

一之瀬の相棒としていろんな人物を演じて見せるのもかわいかったし、

一途に一之瀬を思っている様子もかわいかった。

楓が表のヒロインだとすると、ハルカは裏のヒロインで

こんな風にキュートに悪い女を演じられる水原さん素敵だなあと思いました。

ハルカのような小悪魔的な女の子を演じさせたら

今、水原さんはぴか一なんじゃないだろうか。

とくに最近は最初のころに見られたような硬さが取れていきいきしてていい感じ。

このドラマではどの役も俳優さんの個性にぴったりとあっていて

キャスティング上手いなあと思いましたが

その中でも水原さんはハルカにぴったりだったなあと思います。

 

「大貧乏」も「嘘の戦争」も原作がないオリジナルドラマで

どちらも展開をわくわくしながら楽しめて登場人物も魅力的という

一定のクオリティが確保されたドラマだったように思います。

ほらほら、ちゃんとオリジナルで面白いものが作れるやん♪

こういうドラマがコンスタントに見たいんだよなあ。

大貧乏

これは本当に題名で損をしていると思う。

ちっとも貧乏の話じゃなかったもん。

でも面白かった。

絶対こんな視聴率に甘んじるような内容じゃなかった。

裏番組がキムタクドラマで厳しい状況だったとはいえ

正直どっちのドラマが面白かったかと問われたら

私は迷わずこっちのドラマだと答えます。

メインストーリーの会社が倒産した経緯を暴くという部分も十分に見ごたえがあったし、

その硬派な部分とキャラクター同士の関係性を描くパートもかなり配分が大きくて

その硬軟のバランスがとてもうまく考えられていたんですよね。

序盤、この会社の倒産はなんかおかしい、裏がある! と柿原が言い出した時

社長が計画倒産をしくんだ? って思ったので、

その後数回、社長はあくまでも被害者側ということで話が進んでいき

ゆず子さんも柿原君もちっとも社長を疑っていない流れの時は

ちょっと腑に落ちない部分もあったんだけど

(だって隠し資産に計画倒産とくれば真っ先に社長を疑いますよね?)

社長の悪事がばれてからは本当にすっきりと見ることができました。

社長が黒幕…ということが明らかになるまでは、

加瀬くんがなんとなく裏があるように描かれていたんですよね。

加瀬君は過去の事情から、最初から社長のことを疑っていて

社長のことを頭から信じているゆず子とは根本的に見方が違うところがあったから

そういう描写になったんだろうけど、

その、「なんかある」といった風情の加瀬くんがとても好きでした。

特に、あ、この子いいなあと思ったのは、

序盤で子供たちにびしっと叱るところ。

シングルマザーで職も失っていろんなことで生活が行き詰っているゆず子。

それでも少しでも子供たちに不便をかけないように必死で頑張っていて、

お金のこととか仕事のこととか会社のこととかでいろいろ無理して頑張ってきたゆず子は

ついに倒れてしまう。

でもこどもはそんなこと知っちゃいない。

お母さんがなんかピンチとは思いながらも、

大変そうなお母さんの負担を少しでも軽くしてあげようとか、

手伝ってあげようとか微塵も思わずにいつも通りの要求を繰り返す。

そんなお母さんに甘えることしか知らない子供たちに加瀬君だけははぴしっと叱ります。

自分たちでできることは自分でしろ、できる範囲でお母さんを助けてやれ、と。

子供だからいろいろできないのは当たり前。

ゆず子は自分がシングルマザーだから、

必要以上に子供たちに不便をかけたくないっていう思いがあって

それが子供たちの自立を妨げている部分がある。

加瀬くんはその部分をびしっと指摘して、子供たちを鼓舞し、ちゃんと見守ることで

子供たちに自立を促していくんですよね。

その子供たちとのかかわり方がとても素敵で、

ああこの人はなんか腹に抱えていそうだけど、信頼できる人だなあと思わせてくれた。

後に加瀬くんの過去が明らかになって、

早くにお母さんを亡くしていることがわかって、

なるほどな…だから子供たちにああいう言い方をしたんだなって納得できた。

普段はそんな不幸な生い立ちは微塵も感じさせないひょうひょうとした態度で

でも調査力は優秀という面白い存在感のキャラクター。

この人物を成田凌くんが実に自然体に演じていてとてもよかった。

この加瀬というキャラクターがこのドラマを特徴づける肝だった気がします。

もちろんシングルマザーが奮起して社会悪に挑み、

その女性に学生時代からあこがれていた敏腕弁護士が

ちょこっと私情も絡めながら力を貸して事件を解決に導く…という枠組み、

そしてゆず子を演じた小雪さん、柿原を演じた伊藤君のキャラが

主人公二人のキャラ設定にドンピシャにはまっていたっていうこともあるんだけど

やっぱりこの設定だけじゃひねりが足りなかったんだろうと思います。

柿原は振られても振られても一生懸命ゆず子さんに食いついていきますが

きっとそれだけではワンパターンに陥っていたと思うのですよね。

でも、そこに加瀬くんが加わることで妙な安定感が生まれる。

柿原がゆず子に拒まれても一緒にいられる場ができるんですよね。

特に終盤、ゆず子の身を案じて柿原と加瀬がゆず子のうちに泊まり込むのですが

これも柿原一人だと生々しいというか、無理が生じるような展開も

加瀬が混じるとうまい具合に緩衝材になってくれるんです。

男と女ではなく、家族感が増す…というか…。

子供たちも柿原と加瀬を同等に受け入れていて、それもほほえましい。

柿原だけだと、なんでゆず子は柿原を受け入れないんだ?

っていう思いが大きくなったと思うんだけど、

加瀬くんが混じることで、なんかよくわかんない関係だけど、みんなでいると楽しいよね!

っていうほんわかした仲間になっていった感じがとても好き。

加瀬くんの面白いところは、柿原とゆず子さんを争う三角関係になるんじゃなくて

あくまでもゆず子さんをお母さんとして見ているところ。

早くに家族を亡くしているという設定が生きているんですよね。

立場としてはちゃんと柿原を応援していて

二人が上手くいけばいいと思っている。

そういう関係性がなんか優しくて好きでした。

 

最終回の決着のつけかたもよかったな。

最終回手前で、ついに天満社長を追い込んだ!って思わせて

でも、土壇場で天満社長にしてやられて、

大金を持って海外に逃亡されてしまった。

天満社長を裁くには濱中電子工業をつぶしてでも追及しなければ!

といきり立つ柿原をゆず子がいさめます。

自分たちに正義を貫くために浜中の大勢の社員の生活を奪うことはできない。

それは正義ではない、と。

柿原はいったんはそれで天満社長の追及をあきらめます。

けれど、浜中電子工業を巻き込むことなく天満社長だけを追求する術が見つかって

再びみんなが結集する。

正義のためなら何をしてもいいという方向に突き進まなかったのがよかったんですよね。

警察に捕まった天満社長が言います。

濱中から賠償金を受け取ったのでしょう? と。

それで、未払いの給料と積立金は社員のもとに戻ったはずだ。

濱中も上場を果たしたので損をしていない。

誰も損をしていないのに、なぜ、ここまでする? と。

もし、濱中工業を犠牲にしてでも天満を追い詰めようとしていたら

天満のこの理論に主人公サイドは負けていたのだと思う。

正義はいろんな面があって、自分が正義だと信じる面だけを追求すれば

だれかにとっての悪になりうる。

でも、濱中工業に影響が及ばないように配慮し

天満社長だけを糾弾する方法をとれたことで、

ゆず子の正義はきちんと正当な方向に発揮された。

そういうバランス感覚にも優れていた作品だったなあと思います。

 

脚本の安達さんは、ありがちな題材でもひねりをきかせてドラマを作り出すのが上手い作家さんで

この作家さんが描く人物は一面的じゃなくて、結構人間の業みたいな面も描くけど

でも、根本的に人に対する暖かい視線みたいなものを感じられる作品が多くて

好きな作家さんのひとりです。

特にオリジナル作品は面白い気がする。

このドラマも1クール、十二分に楽しませてもらいました。