新宿スワン(ネタバレ有り)

「新宿スワン」の中身の感想です。
もうそろそろ4週目を過ぎましたが、
まだちゃんと上映されていて嬉しい!
毎週たくさんの映画が公開される中、
4週目過ぎたらあっさり切られる映画も多いですものね。
もともと作品そのものの期待値はめちゃくちゃ低かった・・・っていうのは
前回の感想で十分書きました。
その分、見てからの印象が実情以上によくなったことは否めません(^^;)
龍彦が純粋で真っ直ぐなバカという実に魅力的な人物になっていたことも大きいし、
ダークな世界を扱っている割にはエンタメ作に徹して作られていて見やすかったし。
でも何と言っても秀吉の存在が好きで、それに引っ張られた部分も大きいと思う。
もちろん初見の時はライバル役として憎々しい思いで見ていたんだけど、
あの最期を見てしまうと、もう、ね、2回目はそういう人にしかみえないもの・・・。
1回目見た時に龍彦と秀吉の因縁がわかって、
まず、ああ、これは「20世紀少年」の世界だったんだなあ・・・って思いました。
好きなんですよね、ああいう関係性を描いた話。
子供時代にどうしてもこいつにはかなわねえ・・・っていう友人がいて
憧れて憧れて、その憧れを変な風にこじらせちゃって
そいつに勝ちたくて勝ちたくて、
情熱と能力を間違った方向に注ぎ込んで自滅していく・・・ってパターン。
2回目見た時に思ったんですけど、秀吉って階段のシーン多いんですよね。
でも大抵は登っているシーンなんですよ。
特に前半は。
でも、最後の最後に降りるんだなあ・・・。
いや、降りようとして、落ちる。
秀吉が最期に見上げた空が切なくて・・・。
都会のビルに小さく長方形に切り取られた白く光る曇り空。
1回映画館で見た後、TVで映画のスポットCMが流れて一瞬この空が映るだけで
ちょっと涙がうるっときちゃうくらい・・・。
なんだ? この切ない思いは・・・?
って自分でも不思議な気分だったんだけど、
2回目見て納得しました。
これ「20世紀少年」というよりは映画版「ハゲタカ」だ。
最期の階段、ふっと空を見上げる秀吉の顔、
そして惨めに死んでいくその様・・・なんかこの感じ、やたらと懐かしい・・・って思ったのは
自分の中で勝手に「ハゲタカ」の劉一華の姿を重ねていたからだ!
って思って納得しました。
道理で無性に心がさわさわするわけだ。
私、どうもこういう人物造形に弱いみたいです(^^;)
一時期映画の「ハゲタカ」にやたらとはまったんですよねえ・・・。
今でも玉山君の一番の代表作は「ハゲタカ」の劉一華だと思っているくらい。
そう言えば玉山君と山田君、どことなく顔立ちも似ていますしね。
「手紙」で玉山くんがキャスティングされたのは
主役に決まっていた山田君に顔立ちが似ていたことも一つの要因だったって
どこかで読んだ気がする。
過去を捨てるために名前を変えるのも、
自分がのし上がるためには手段を選ばないのも、
憧れをこじらせているところも、
最期に夢破れて、やっぱりアイツにはかなわないと思い知らされて、
惨めに死んで(殺されて)いくところも、
きれいに重なるんですよね。
でも大きく違うのは
劉一華は徹底的に鷲津に叩きつぶされるけど、
秀吉は龍彦に思い出してもらえて歩み寄ってもらえるところ。
鷲津は劉のルーツを辿って、劉一華の根底にあった「思い」も背負って前に進んでいく。
それが劉の救いになっているんだけど、けれどもそれは劉の死後のことで・・・。
でも、龍彦は秀吉が生きている間にちゃんと秀吉のことを思い出して、
まっすぐに秀吉に向き合って行くんですよね。
結果的にはそれが秀吉の命を縮めることになったとしても、
その龍彦の「思い」は見ているものにすごく救いになっている気がする。
もちろん、秀吉自身にも。
龍彦の思いは確かに秀吉に届いたんだと思う。
龍彦との喧嘩の後の秀吉の表情は背負い込んでいた何かを脱ぎ捨てたかのようだったもの。


ただ、やっぱりどんな言葉を使おうと龍彦が誰も救えていないのは事実。
栄子もアゲハも秀吉も、誰一人救うことが出来なかった。
でも、この「誰一人救うことができなかった」部分が、この映画の良心だと思うんですよね。
原作のファンの方の感想もいくつか読んだんですが、
原作はもっと龍彦が肝を据えて
(つまり「俺がスカウトした女は幸せにする」というきれい事じゃなく)
龍彦はスカウトの仕事につく覚悟をするらしいし、
もっともっとシビアに現実を切り取っている・・・らしい。
確かに原作を知らないまま映画を見ても、龍彦のセリフは甘いなって思うし、
栄子が死んだ後、真虎さんに言われて街を歩いて、
自分がスカウトした女の子たちから「私達幸せだよ」って言われるくだりは
龍彦の言葉を肯定しているようにも見える。
でも、話全体としては、ちゃんと龍彦の覚悟を真剣に問うものになっていると思うんですよね。
栄子の心の傷に気付きながら見て見ぬ振りをしてしまって、
結局栄子を救うことができなくて・・・。
だからアゲハにはかなり積極的に関わって行こうとしたのに、
アゲハは龍彦が思うよりももっと深い闇に沈んでしまっていて
やっぱり龍彦の力ではどうすることも出来なくて・・・。
秀吉に対しては命をかけてまで真剣に向き合おうとするんだけど、
龍彦の力では全然及ばないような街に巣くっている巨大な闇が秀吉を飲み込んでいく。
この映画は龍彦が新宿という街の闇の深さ、怖さを知って行く過程を描いたもので、
映画の最後に「行くぞー!」と叫ぶことで、
ここで初めて、本当の意味で、「この街でスカウトとして生きていくこと」の覚悟が出来たんだと思う。

このラストの「行くぞ~」がすごく好きでした。
厳密に言うと、そこに至るまでのシークエンスが好き。
龍彦が初めて新宿に来た時の白いトレーナー姿で、新宿のゲートを見上げる。
ずんずん歩く龍彦の横に、次々に登場人物達が現れる。
登場人物達の日常の一コマが切り取られて、パノラマ的に並べられて、
そこを龍彦が前を見て歩いて行く。
ほんの一瞬の顔見せなのに、次々と現れる登場人物にいちいち嬉しくなってしまうのは
キャラがみんな上手く立っていたからなんだろうな。
みんな現実っぽい登場の仕方をしている中で
アゲハだけがあったかもしれない空想の姿で登場。
あれは龍彦の願望だったのかな。
その名の通り蝶が花の間を縫うように、軽やかに眩しい光を放つ新宿の通りを歩いて行く。
幸せそうな彼女の顔が切なくて・・・。
何とか今回の逮捕を契機として、彼女が立ち直ってくれたらいいのにと願う。
本当にこんな風に笑いながら街を歩ける日が来るように・・・。
「行くぞ~」って頭を振りながら顔を上に向けるシーンは予告で多用されていたんだけど
まさか最後の最後にかかるシーンだとは思っていませんでした。
あの水しぶきは、秀吉との間にいつも降っていた雨だったんだなあ。
それを振り払って「行くぞ~」っと前へ進む・・・。

龍彦が秀吉との待ち合わせに出向くシーンも好きでした。
雨の中、喧嘩に興じる少年達の間を、まっすぐ前を向いて歩く姿。
龍彦は時間を超えて、秀吉と向き合うために今歩いているっていう感じがすごく伝わって来た。
秀吉のいるビルに飛び移るために猛ダッシュするバックに過去の映像が映るシーンは、
事前に長い予告の中で見た時は、
なんじゃこのださい演出は・・・( ̄□ ̄;)
って思っていたのですが、ちゃんと物語の流れの中で見るとすごくよかった。
秀吉が龍彦との間に勝手に引いてしまった溝。
それがあのビルとビルの谷間だったのだから、
それを飛び越えると言うことの意味を、あのバックの映像が上手く表現していたと思う。

映画を見終わって改めて考えてみると、
綾野君がインタビューで言っていたことがよく分かる。
龍彦の言っていることがきれい事だと言うことも、
龍彦は結局誰も救えていないと言うことも、
全部、事前にインタビューの内容として読んだり聞いたりしていたんだけど、
見終わってから、映画のことを考えているうちに
ああ、あの綾野くんの言葉はこういうことを言っていたんだなあ・・・って
少しずつ実感を伴って繋がっていく・・・。
だから、綾野君が見据えているこの先の龍彦の姿も見てみたいと思う。
あれだけ熱意を持って公開前から続編に言及する綾野君を
今までそんなに見たことないと思うから、なおさら。
とにかく今は「新宿スワン」が少しでもロングランすればいいな、と願っています。


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posted by HaHa at 05:41Comment(0)映画

ソレダケ /that's it

私のツイッターのタイムラインでは、
日々おびただしい「ソレダケ」の感想があがっていて、
しかも皆さんかなり熱い感想で、
「スワン」よりヒットしている作品なのかなあ・・・って気分になってきます(^^;)
これは絶対見に行かねば・・・と半分洗脳された気分で映画館に行きました。
ツイッターの面白い所であり、怖いところですよね。
いっぱい感想がタイムラインにあがってくるのは、
私が監督と公式のアカウントをフォローしているせいで、
その二つのアカウントがせっせせっせと感想や関連情報をリツイートするから。
(しかもかなりの頻度で)
タイムラインが染まっちゃうと世の中全てがそういう感じなのかな・・・
って勘違いしちゃう・・・(^^;)
政治的な思想ならそんな風に感化されちゃうのって怖いけど、
好きなエンタメの世界だったらそれもいいんじゃないかとも思うんですよね。
ただ、タイムラインは決して世間一般じゃない・・・
っていうことは常に意識しておかないといけないとは思いますけど。
とは言え、この作品はビジュアルが公開された時からとても楽しみだった作品。
綾野君が出演するって分かっている公開待機映画いくつもありますけど、
ビジュアルで「これ絶対見たい!」って思ったのって、
この「ソレダケ」と「天空の蜂」だけだったんですよね(^^;)
こういうタイプの役を生きる綾野剛は見てみたい! と思っていました。

この「ソレダケ」という映画は
もともとbloodthirsty butchers(ブラッドサースティ・ブッチャーズ)
から音楽映画を作らないかともちかけられて企画されたんだけど、
その話を持ち込んだリーダーの吉村さんが企画途中で亡くなって、
急遽企画そのものを変えて制作されました。
だから全編を通してブッチャーズの音楽が爆音で鳴り響きます。
いくつかは爆音上映と銘打って、
受付で耳栓が配られるほど大きな音で上映された映画館もあったみたいですが、
(確かライブハウスで、ライブの音響で上映されたこともあったはず)
普通の上映でもめちゃめちゃ爆音。
通常の映画のMAXの音量で、全ての音楽、効果音が鳴っている。
私、恥ずかしながらこのバンド、全く知りません(; ̄ー ̄A アセアセ・・・
ついでに、大きな声では言えないのですが、私、大きな音苦手なんですよね・・・(⌒~⌒ι)コマッタナァ
特に突発的に鳴る大きな音はダメで・・・。
ライブなんかだとその音量で馴染んでくるとかなり大丈夫なんだけど
始まりの第一発目をガンとこられるとやっぱりビビる・・・。
だからこの映画も前半かなりびびりながら見ていました。
曲としてずーっと鳴っていると心地よくなってくるんだけど、
効果音的にギュインと大きなギターの音がなると頭がくらっとする(^^;)
そんなこんなで、たぶんこの作品、
ものすごく根本的なところで私向けじゃなかったんだと思います。
・・・・・・と言いながら、実は2回見に行きました。
京都では上映時間がお昼間と夜しかなくて、
週末はなんだかんだで見に行けなかったので、2回とも仕事終わりに直行で。
私的にはかなり無理してまで見に行ったんです。
本当は1回目見た時に、あんまりピンと来なかったんですよね。
自分が感じた感想と、ツイッター上で見る熱のこもった感想の温度差が激しくって、
でもまあ、これは自分向きの映画ではなかったんだと、
綾野君の参加作品全てを熱狂的に支持できるわけではないし・・・と自分を納得させて、
あんまりわかんなかった・・・と、
さらっと感想書いて終わらしとこ・・・って思ってました(^^;)
でも、とある方のブログ(こちらから読めます「ソレダケ、思いのたけ」)読んで
ちょっと目から鱗の気分になって、
自分はずいぶん見落としていたことがあるんじゃないかって気がしてきました。
この感想を読んでいると、いろんな疑問点や不満点が腑に落ちて、
もう一回実際に映画を見てどうしても確かめたくなりました。
その思いが止められなくて、無理して思い切って映画館に行きました。
2回見たら、これはこういう映画だったんだ・・・って自分なりに納得できてちょっとすっきりした。
ツイッターで語られているほど熱い感想ではありませんが、
自分なりに腑に落ちた部分や思ったことをちらほらと書き残しておこうと思います。
以下ネタバレです。

1回目見た段階で私が理解していたのは、
このお話は父殺しがテーマのお話なんだなあというところまでです(^^;)
最初の父への憎しみが後にその父を殺した千手に向けられる。
映画の色彩がカラーになるところから襲撃までが
脳死状態になった大黒の夢で、
千手を無意識に倒したことで、大黒は長い夢から覚める話・・・だと思っていました。
少年が大人になる通過儀礼の一つとして父を殺すというモチーフはよくあるし、
その対象が千手という絶対悪に変わっただけ。
けれども、千手が絶対悪だという割には「千手深水」のくだりは妙に安っぽいし・・・
なんで絶対悪がわかりやすい商売やってんだ? (-。-;)
恵比寿や犬神なんかの上納金だけじゃだめなのかな・・・。
それからいろんな所が容易すぎ・・・。
例えば、最初に恵比寿に監禁された倉庫から逃げ出すシーン、
恵比寿が鎖でぐるぐる巻きにした上にしっかり南京錠もかけているのに
二人が体当たりしただけで出てこれるし。
なんとなくツメが甘い(ように感じる)箇所が何カ所かあって・・・。
そういう何となくもやもや~とひっかかる部分が、
ツイッターで見かける皆さんの熱い感想と相容れなくって、
ああ、私には合わない映画だったんだなあ・・・と結論づけていました。
でも前述のブログを読んで、ああそういう見方が出来るんだ!
と一つの見方を教えてもらって、ちょっと突っ込んでこの作品を考えられるようになりました。
私がそうか・・・と特に感心したのは
まず、千手は大黒と対になっていると言うこと。
それから、カラーになってからというよりもこの作品全体が夢なのではないかという指摘、
あと、千手が追い求めるハードディスクはアイデンティティの象徴だということ。
千手が大黒と対・・・というのは薄ぼんやりと了解していた気はします。
衣装も見事に白と黒ですしね。
千手は大黒の対極の存在。
千手登場シーンで千手自身が言っていますよね。
「光がなければ闇は存在しない、善がなければ悪は存在しない・・・」
みたいなこと。
最初から千手は自分自身が悪であること、
誰かとの対比の中で初めて実在出来る存在なのだと宣言している。
善と悪の対比で考えてしまうと、千手が悪なのだからじゃあ大黒は善なのか?
っていうことになってしまうんだけど、
あくまでも大黒との対比の中で存在していると考えると、単純な善悪の対比ではないのかな・・・
と思えてきます。
千手は、この映画前半で大黒が望んだ姿なんですよね。
父親に虐待されていた時、父親が「どちらを選ぶ?」と差し出した酒瓶と包丁
(あれ? ナイフでしたっけ? ちょっと失念(^^;))
怖くて酒瓶しか選べなかった大黒と
包丁を指さした千手。
父を殺したいと思いながらも居場所すらつかめなかった大黒と
父殺しを実行した千手。
父親に戸籍を売られて、幽霊のように社会のどん底で生きるしかない大黒と
闇の世界の実力者として君臨している千手。
映画の最初の部分で大黒がこうしたい、
こうなりたいと言っていたそのものの生き方をしたのが千手で、
なのに大黒は千手を見て「コイツは許せねえ」と思うわけです。
それまで大黒の仮想敵は自分を今のような境遇に追い込んだ父親だった。
つまりは自分の不幸の根源を他者のせいにして、
それを倒すことで新しい未来を手に入れようとしていたんだけど、
憎しみの対象が千手に移ることで、
大黒の戦う相手は自己の内部に巣くう悪へと変わったんじゃないかな。
千手はあくまでもその象徴。
それって人の成長過程の一つですよね。
千手の拷問の後生き返った時点でカラーになるのは、
その意識の変化を表しているんじゃないのかな。
また、この映画ではやたらと走るシーンがあるのですが、
前半で走るのはひたすら逃げるため、なんですよね。
でも、中盤以降は、千手を倒すために走り出す。
逃げても何も始まらない、立ち向かってこそ何か変えられる。
阿弥にもそんな感じのこと言っていましたよね。


この映画の全体が夢というのも、言われてみればなるほどなあ・・・という気がする。
急に登場する千手深水の工場が妙に現実的でありながら
その内部はさながら特撮ヒーローものの悪の秘密基地みたいな嘘っぽさも、
延々と続く追いかけっこの息詰まる感じも、
鎖がかけられたドアが体当たりで簡単に開いちゃうのも
これが夢だからだと言われればスッキリする。
そう言えば、最後の手術室のシーンも、
医者の様子が結構リアルなのに、
千手たちが平気で普段着で手術室に入り込んでいたりする違和感も
どこか夢の中のリアルっていう感じがする。
私、よくテレビをつけっぱなしでうとうとしてしまうんですけど、
その時にテレビの内容が夢に反映して、変にリアルな夢を見ることがあるんですよね。
それに近い感じなんじゃないかなあ・・・。
おそらく恵比寿からハードディスクを盗んで逃げたり、
千手に拷問されるという事実はあって、
その現実がすごく夢の中に反映されていて、
冒頭はその記憶を追体験するような形で夢を見ていて・・・。
途中、千手の潜伏先を襲撃するあたりは完全に架空の出来事なんだろうけど、
どこか遠くで暮らそう・・・という阿弥の言葉や
手術室の千手と手下、阿弥の会話なんかは
現実の会話を拾って、脳の中で夢として再構築しているから
どこか違和感のある描写になっている感じがする。
完全なる空想部分と現実が反映された部分がごちゃごちゃに混ざってできている感じ。

また、ハードディスクがアイデンティティの象徴だとすると、
千手がハードディスクを手にして死ぬのも意味があるんだろうなあと思う。
千手が大黒が望んでいたものを具現化した存在だとすれば、
今までこのハードディスクだけが千手に欠けていたものだった。
それを手にして、完全な存在となった千手を
生きたいと言う一念で倒すことで、大黒はようやく目覚めることができた。
あるいは、大黒があんなに欲しがっていた戸籍というデータは
本当の意味での存在証明なんかじゃなくて、
自分の存在は自分でしか証明できない。
空っぽのアイデンティティを持って死んだ千手と
無意識ながらも生きるために自分の力で起き上がった大黒と
ここでも見事な対比になっているんじゃないかなという気がします。

1回目見た時に気付けなかったことってまだたくさんあるんですけど、
お恥ずかしながらライブハウスが恵比寿の隠れ家の斜め向かいだって言うことに気付いていませんでした。
特徴的な丸窓がついた扉と、ワンシーンだけ取り込まれたライブハウスの内部の様子
(実際のブッチャーズのライブ映像なんですよね?)
は覚えていたのですが、頭の中で上手く繋がってなくって・・・。
このお話はブッチャーズのライブが行われているライブハウスのすぐ側で起こっていた出来事なんですね。
このお話に出てくる町は、ちゃんとリアルな街なのに、
街に住んでいるはずのモブとしての人間はほとんど画面に映らないんですよね。
そんな中で物語の登場人物以外が画面の中央に映り込むのってここだけで、
この短いライブのシーンが私達の生きるこの現実世界と物語の世界をつないでいる。
通常はこのライブハウスの内部は映らなくて、
締められたドアの向こうから音が聞こえているだけ・・・。
それくらい大黒達が生きている社会は閉じた社会なのかな・・・って思う。
阿弥が大黒を助ける為に助けを求めた相手が犬神で、彼もまた千手の手下だった・・・
っていうのが分かった時、彼らが生きている社会はなんて狭いんだ・・・って感じました。
たぶん1回目見た時に何となくはまりきれなかったのも
このものすごい閉塞感があったからだと思います。
どこまで行っても逃げられない閉じられた世界がちょっとしんどかった。
けれどもロックという音楽がそういう閉塞感を打ち破る音楽とすれば
必死にあがいて戦って、その世界から抜け出そうとする大黒を描いたこの映画は
まさにロックな映画なんだなあ・・・と思いました。


登場人物がこれまたすごくって・・・、
みんなものすごくキャラがたっている。
恵比寿を演じた渋川さんは、私が知ったきっかけが「空飛ぶ広報室」だったこともあって、
職人肌の気のいい兄ちゃんのイメージだったんだけど、
饒舌で軽みのあるワル役、すごくいい!
というか、本来はこういうイメージの役の方が多いのかな?
広報室の時から好きだったんだけど、改めて好きな役者さんになりました。
村上淳さんはたぶんお名前を覚えてからもう20年くらいになると思うんだけど、
見ているドラマ(ドラマは少ないけどね)や映画で名前を見つけると
嬉しくなる役者さんの一人。
それほど追っかけて見ていた訳では無いのでそんなにたくさん見たとは言えないのですが
でも私が見てきた中でピカイチで村上さんの持っている雰囲気を活かした役だったと思います。
恵比寿と犬神が揃うシーンの二人の並び大好き。
染谷くんは睫長いし(え? そこ?Σ(- -ノ)ノ エェ!?)
そしてそして、綾野君です。
「新宿スワン」の綾野君を白綾野、「ソレダケ」の綾野君を黒綾野っていう表現、
まさにその通りだなと思います。
ほぼ同時期に公開されている作品で、
こんなに両極端に振れた役を見られるのは本当に嬉しい限り。
千手ってなんか色気があって、傷を見せるために肩を見せるシーンは何回見てもどきっとする。
(予告にこのワンシーンが入ってるんです)
千手は悪役だけどものすごく表情豊か。
「新宿スワン」の龍彦もよくここまで顔が動くな・・・というくらい変顔したり
喜怒哀楽様々な表情を豊かに見せてくれるのですが、
千手はまたそれとは違った豊かさ。
人をいたぶることにぞわぞわするほどの快楽を感じている顔、冷酷な顔、残忍な顔。
この人は、悪の表情のバリエーションをこんなにも持っていたんだ・・・と驚きました。
そして、小刻みに表情を変えていくのですが動きはあくまでもゆっくりで。
ちゃかちゃかと落ち着きなく動く龍彦と違って、
重くゆっくりと動くことで威厳を感じさせている。
何よりも驚いたのはセリフ回しです。
これだけの長セリフを心地よいセリフ回しで言えるんだあ・・・オオーw(*゚o゚*)w
最初に見た時は声のトーンとリズムのあまりの心地よさに、
中身ほとんど頭の中に入って来なかったですもん(あかんやん・・・)
いやいやそれくらい見事なセリフ回しだったということです。
舞台の経験が活きたのかなあ・・・。
「最高の離婚」の頃かなあ・・・役作りをする時はどういう声で喋る人物かをまず考える
みたいなことを話されていたと思うんですが、
千手は今まで綾野君が演じてきた中でも低い声のキャラクター。
今までは低い声の人物って声の演技としては一本調子になってしまったり、
声に感情が乗り切らなかったり・・・
(でも雰囲気はすごい出るんですけどね)
でも千手は低い声で、実に豊かな表現になっている。
30を越えても日々上手くなっているんだなあ・・・。

実はこの記事、1回書き上げたのに、アップする前にぶっ飛びました。
私は文章を書くのがそんなに早くないし、
特にこの映画の感想は言葉にするのが難しい部分が多くって、
ああでもない、こうでもない・・・とかなり試行錯誤して、
土曜日の大半を使って一生懸命書いて、ようやくできた!
とスッキリした途端にぶっ飛んだので、めちゃくちゃ落ち込みました。
思い出しながらもう一回書いたものの、たぶん元の8割くらいしか思い出せなかった・・・(´_`。)グスン
何にしろ、この映画をもう1回見てみようと思えるきっかけを与えてくれた記事に感謝感謝です。



追記

文章中に何度も触れさせていただいた たま さんの記事を、たま さんのご了解を得て
リンクを張らせてもらいました。
この感想は完全に たま さんの感想にのっからせてもらって書きました。
「ソレダケ」だけじゃなく、「太陽2068」の詳細で深い観戦記事も書いていらっしゃいます。
こちらもとっても素敵な文章です(^^)

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「新宿スワン」なんば舞台挨拶

大阪難波の舞台挨拶に行って来ましたあ。
前回非常に少人数で見たのとは対照的に
大きな会場が満員御礼。
やっぱり大勢で見るのは楽しいですね(^^)
私が参加したのが1回目(12時45分)の回で、
2回目の回の方は取材が入っていたらしく結構ネットニュースにあがっているのですが、
1回目はあんまりメディアも入ってないみたいだったので
とりあえず覚えている範囲で覚え書き。

席は後ろから数列目くらいの位置だったので、
表情はほとんど見えないものの、
確かにそこで動いて喋ってる! 
その姿を何のフィルターも通さずに見ている・・・というだけで感激!
1回目はメディアもあんまり入ってなかったので終始とてもリラックスした感じで話されてましたねえ。
どれくらい遠目だったかというと、こんな感じ(^^;)

Img_0114_4

ズームにしてもこの程度。

Img_0127_2

服装はなんとか判別できるけど、髪型まではよくわかんなくて・・・。

でもなんかスッキリした感じだなあって思ってました。
今やっている作品の役の感じなのかなあ。
私が見た回は上映後の挨拶だったので、
司会の方が「みなさん映画を見終わって『新宿スワン』の世界観にひたられていると思いますが・・・」
みたいなことを言ったあと
「すみません。全然『新宿スワン』っぽくない髪型で」
って謝ってました。
いえいえ、宣伝中ずっとあの髪型だったら、そっちのほうがひきます(^^;)
帰ってからもっと近くの席で見られていた人たちが写真をツイッターにアップされているのを見ると、
やっぱりずいぶん短い髪になっているんですねえ。
ついでに帰ってからもぎりをやっていたと聞いてびっくり!
1回目の挨拶が終わった後だったのかしらん・・・。
綾野君本人にチケットもぎってもらうなんて、なんてすごい・・・。

帰ってから知った時、うそ~ん(;へ:)って悲しくなったのですが、
いやいや、そんな至近距離で会うなんて緊張しすぎて貧血起こしそうだし、
生でお姿が見られただけで十分! と自分に言い聞かせて・・・。
ちなみに1回目はくす玉もなかったです(´_`。)グスン
そうか・・・こういうイベント事は後の回のほうが華やかなんだな・・・覚えとこφ(・_・”)メモメモ
まあ、今回は時間的にこの時間がベストだったので仕方ないのですが・・・。

「大阪好き」っていうのは1回目でもかなり言ってました。
本当は泊まりがけで来たかったのに、今日は日帰りなんだとか。
仕舞いには宣伝担当者(最前列正面に陣取ってらした)を紹介して、お泊まりしたかったと愚痴・・・。
あやしげな大阪弁も飛び出していました(^^)
それから質問タイム。
覚えているものを順不同であげていくと、
難しかったシーン(だったと思う・・・あれ? 印象に残っているシーンだったっけ)、
好きなシーンは?
という質問に
難しかったシーンとしては、秀吉と初めてやりあうシーンで、
あのシーンでは秀吉の鋭利さを表現することが必要だったので
それを強調するように、受ける演技を工夫したとのこと。
殴られた時の衝撃を強調するために頭の振りを早くしたりしていたそうです。
また、自転車などに突っ込むのもその場で考えたそうで、
監督も最初はびっくりされたそうです。
それから、好きなシーンは関さんが女性の胸をもむシーンと、
アゲハと逃げるシーンの最初に映るアゲハの下着のライン・・・らしい。
ここ、なんかすごく等身大の男性っぽい感じがして好きでした(^^)
親しい俳優さんは?
という質問に対しては、
山田孝之はよく知っていますし、深水さんは「クローズZERO」から知っていますし
優の旦那は小栗旬なのでよく知っています。あっくん(金子ノブアキ)も十年来のつきあい。
鋼太郎さんも・・・初めてだったのは伊瀬谷さんと豊浦さんですね、という答え。
変顔は練習したんですか?
という質問もありました。
変顔でした?
ととぼけておられましたが・・・(^^;)
あれはどう見ても変顔でしょう?
さすがに変顔を家で一人で練習するのは闇(だっけかな? なんかこんな感じの表現)なので
家で練習はしていないそうです。
あのシーンは先輩スカウトマンとの関係性を見せなければならないので
現場で思いついて提案したそうです。
もっといろいろな顔をしたつもりだったそうなのですが、
思ったよりワンパターンになっていたそう・・・。
結構編集でカットされているそうです。
役作りとして準備したことは?
という質問に対しては、
若さを出すために顔を「パン」とした感じにしたそうです。
なかなか思うようにはならなかったそうですけど・・・(^^;)
撮影当時32歳だった自分が19歳の主人公を演じることは壮大なファンタジーと、
ここでも言っていました。
それから髪型など外見的な準備はしたけれど、
あとは現場に入ってから決めていった・・・というようなことを答えられていました。
まだなんかあったはずなのに思い出せないな。
やっぱりメモ取りながら聞かないとダメですね。

舞台挨拶が始まる前に司会者が撮影はダメって言っていたんだけど、
綾野君が「撮ってもいいです」って言ってくれたので、一斉に撮影大会。
私、へんに律儀な性格で、映画見るときは絶対に携帯の電源を落としていて、
最近のイベントでは結構写真OKなこともあるっていうことは知ってたのに、
今日も最初に司会者が釘をさされたので、
撮影はしてはいけないものだと思い込んで
電源を切ったままカバンにしまい込んでいたんですよね。
で、綾野君の言葉に驚いて慌ててカバンから携帯を引っ張り出し、電源を入れたんだけど、
立ち上がらない・・・Y(>_<、)Y ヒェェ!
結局最後1分くらいで立ち上がって、よく分かんないまま撮りまくり・・・。
でも、何せ席が遠いので、一生懸命ズームしても上にあげた程度・・・。
ま、いいんです。今日の記念になれば!
とりあえず嬉しかったので帰りの電車に乗りながらツイッターでつぶやいときました。
綾野君にもSNS等で宣伝して置いて下さい・・・って言われたしねv(。・・。)イエッ♪
ま、フォロワーさんが50人程度の私がつぶやいてもなんのたしにもならないでしょうが・・・。

あ、あと印象に残っているのが、
この映画は登場人物それぞれの主観でできています。
だから観客に客観的に見てもらって初めて完成します・・・っていう感じの言葉。
これはネットニュースでも出てたので、2回目でも言っていたんだな。
ちょっと分かり難かったんだけど、聞いた時にこういう事なのかなあと思ったのは、
この作品って「スカウト」という仕事を美化してる(から気に入らない)っていう意見いくつか見たんですけど、
それに対するアンサーだったんじゃないかな・・・っていうこと。
作品の中でスカウトという職業に龍彦が何度か疑問を持ちますが、
一応話の中で龍彦がこの仕事をする意味みたいなものを提示している。
真虎さんが語るんですよね。
それが確かに非合法な「スカウト」という職業を肯定していると取れなくもない。
でも、作品の中では、それぞれの登場人物が
それぞれの信念や価値観で生きている姿が描かれているだけで
映画全体としてそれを肯定しているわけでも、否定するわけでもない。
その部分の判断は観客に任せますよ。
逆に観客が判断しながら見ることで初めて、
作中の人物のそれぞれの生き様がくっきりと浮かび上がる・・・ということなんじゃないかなあ。よくわからないんだけど。

とまあこんな感じで、終始なごやかな舞台挨拶でした。
映画そのものも2回目見たことで考えることもいっぱいあって、
今度は内容にちゃんと触れた感想を書きたいな。
この映画、ジャンル的には全然好きじゃないのに、
妙に心引かれるわけがわかった気がしたんですよね。
書けるかな・・・最近サボりがちだからな・・・反省orz
とにかく、今後こういう舞台挨拶みたいな機会がある場合は
時間が許すなら後の回を狙おうと心に決めた一日でした。


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